気は長く 心は丸く 腹立てず 口つつしめば 命長けれ
2025.12.12

昔の人が残した言葉には、長い年月の中で磨かれてきた深い知恵があります。「気は長く 心は丸く 腹立てず 口つつしめば 命長けれ」この一句もそのひとつです。短い言葉ではありますが、その中には、人としての振る舞い方、そして穏やかに生きるための秘訣が丁寧に込められています。
まず、「気は長く」。
焦らず、急がず、人と向き合う。福祉の現場では、まさにこの姿勢が大切です。できることが昨日より少しゆっくりになっても、それは人としての自然な歩みです。寄り添い、待つことも支援のひとつです。
次に「心は丸く」。
角の立った言葉や態度は相手を遠ざけます。利用者ご家族、地域、職員同士、私たちは多くの関係の中で働いています。相手の背景や気持ちに思いを巡らせ、丸い心で接することが、安心と信頼を育てます。
続く「腹立てず」。
思い通りにいかない出来事は誰にも訪れます。けれど、怒りは自分の心の平和を奪い、周囲にも波を広げます。深呼吸一つで変わる空気があることを、私たちは経験から知っています。
そして「口つつしめば」。
言葉は目に見えませんが、人を傷つけることも、励ますこともできます。何より、一度発した言葉は取り消せません。だからこそ、言葉には思いやりを添えたいものです。
最後にある「命長けれ」。
これは単に寿命が延びるという意味だけではなく、穏やかで満ち足りた人生が送れるという願いの表現と受け取っています。
現代社会はスピードを求め、効率を重視します。しかし、人との関わりには、効率では測れない価値があります。だからこそ、この古い教えが今、私たちに静かに問いかけているのかもしれません。
