私は1980年頃から2003年までの約20年間喫煙者であった。職場では、ストレスによってタバコの本数が増え、1日80本を超えるヘビースモーカーになっていた。当時は、至る所に灰皿があり、喫煙には寛容な時代だったが、今思えば身体への影響は大きく、顔の皺、皮膚の痒み、手荒れ、口唇の乾燥、歯肉出血、匂いへの鈍麻、体重減少、そして強烈な胸痛に見舞われた。内科医との問診で「一生分のタバコを吸ったから、もうそろそろ止めても…」と言われ、禁煙を決意し、今も継続中である。
2019年日本人の喫煙率も男性27.1%・女性7.6%となったが、我が国の受動喫煙対策https://kensyoukai.or.jp/column/wp-content/uploads/2023/07/受動喫煙対策.pdfも進み、街で喫煙者を見かけることも少なくなった。1980年の死因順位において第1位は脳血管疾患、第2位は癌、第3位は心疾患であるが、2020年の死因順位の第1位は癌、第2位は心疾患、第3位は老衰と続き、疾病構造も変化し、国民の健康意識の高まりから喫煙者が減り、併せて幼少期からの禁煙教育も実を結んでいると思う。
2006年から禁煙治療が保険適用となり、喫煙を単なる「習慣」ではなく「ニコチン依存症」として診断し「疾病」と捉えるようになった。慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、進行の改善と症状の阻止には禁煙は必須であり、症状が進めば、在宅酸素療法も必要となってくる。
禁煙するメリットは「起床時のダルさがなくなる。」、「食べ物の味が判る。」、「風邪にかかりにくい。」、「匂いに敏感になる。」など良いことだらけである。たばこは嗜好品であると言う人がいるが、嗜好品とは味覚や嗅覚を楽しむために飲食される食品・飲料のことである。つまり、コーヒー味、フルーツ味など香りづけできるものであり、「たばこ味」の食品はこの世に存在しない。
これだけタバコには害があるといわれても「自分だけは病気にならない」「たばこを吸っても長生きする人がいる」等と思い込み、都合のよい情報をもち、タバコの害を小さく考える。喫煙者はリスクに対する非現実的な楽観主義者である。
たばこに含まれるニコチンは依存性のある薬物である。喫煙者の中にはたばこを止めたい人も禁煙に失敗した人もいると思う。しかし、失敗しても何度でも禁煙にチャレンジして、諦めずにニコチン依存からの脱却を目指してほしい。禁煙で失うものは何もなく、あるのは禁煙による健康である。