理事長コラム

門司誠一の思いをつづります。

  • 2023.07.19

     近年、電気料金は「高騰」と言うより「暴騰」している。平成23年3月に発生した東日本大震災により、福島第一原子力発電所の事故を契機に九州電力が保有する原子力発電所は停止した。すると平成24年11月に九州電力から「電気料金値上げのお願いに関する資料」 が送付されてきた。資料によると年間電気料金14,988,000円を16,899,000円へ値上げするとの内容で、翌年からは何と1,912,000円の値上げである。

     令和4年10月に九州電力の担当者が当法人を訪れ、電気料金の提案を持参した。ご提案との記載はあるが、実際は一方的な値上げ勧告である。

     値上げの背景の1点目が、「玄海原子力発電所停止に伴う供給力不足は、火力発電等で補完し、発電のために必要な燃料調達コストが新型コロナウイルスからの経済回復やロシア・ウクライナ情勢等の影響により、大幅に上昇している状況である。」、そして2点目が「旧一般電気事業者は市場の流動性向上や価格抑制などの点から、自社発電量の一定量を市場へ卸し、また逆に市場から調達する(買い戻す)取り組みを実施していますが、市場価格の高騰に伴い市場からの調達コストも増加している状況です。」と記載されている。

     そして、1年間の本法人の現行電気料金15,793,844円のところ、提案金額として21,695,195円を提示される。現行からの値上げ額は5,901,195円である。私ども事業者は、使用した電気は支払う義務があるが、あまりにも値上げ額が大きすぎて言葉も失い、佐賀県と鳥栖市から物価高騰に係る補助金をいただき難関を突破したが、今年も心配は尽きない。

     他社の事情であるが、自社所有の物件の売却、人件費削減策、テレビCM等の事業見直しを明示して値上げのお願いをすれば私ども事業者や利用者は値上げに納得するであろう。「提案」という言葉巧みな値上げ勧告書には赤字で「本資料につきましては、社会福祉法人健翔会さま限りでお願いいたします。」との記載があり、「他の法人とは値上げ金額に相違があるのか?」とも受け取れる。

     因みに、平成24年11月の提案資料には、社長名は記載されているが社長印はない。利用料金値上げのお願い文書を見かける機会はあるが、代表者印がないのは記憶がない。昨年の11月の提案資料は社長名もなくパワーポイントで作製されていた。競争もなく、他社へ乗り換えられない状況であるからこそ、お客様から対価をいただく謙虚な姿勢が必要だと思うが・・・

     中国電力・九州電力・中部電力は関西電力との間で、事業者向けの電力販売をめぐり顧客を奪い合わないよう申し合わせるなどカルテルを結んでいたとして、経済産業省から電気事業法に基づく業務改善命令が出された。今後の我が国の電力自由化はどこに向かうのか不透明である。

  • 2023.07.13

     私は1980年頃から2003年までの約20年間喫煙者であった。職場では、ストレスによってタバコの本数が増え、1日80本を超えるヘビースモーカーになっていた。当時は、至る所に灰皿があり、喫煙には寛容な時代だったが、今思えば身体への影響は大きく、顔の皺、皮膚の痒み、手荒れ、口唇の乾燥、歯肉出血、匂いへの鈍麻、体重減少、そして強烈な胸痛に見舞われた。内科医との問診で「一生分のタバコを吸ったから、もうそろそろ止めても…」と言われ、禁煙を決意し、今も継続中である。

     2019年日本人の喫煙率も男性27.1%・女性7.6%となったが、我が国の受動喫煙対策https://kensyoukai.or.jp/column/wp-content/uploads/2023/07/受動喫煙対策.pdfも進み、街で喫煙者を見かけることも少なくなった。1980年の死因順位において第1位は脳血管疾患、第2位は癌、第3位は心疾患であるが、2020年の死因順位の第1位は癌、第2位は心疾患、第3位は老衰と続き、疾病構造も変化し、国民の健康意識の高まりから喫煙者が減り、併せて幼少期からの禁煙教育も実を結んでいると思う。

     2006年から禁煙治療が保険適用となり、喫煙を単なる「習慣」ではなく「ニコチン依存症」として診断し「疾病」と捉えるようになった。慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、進行の改善と症状の阻止には禁煙は必須であり、症状が進めば、在宅酸素療法も必要となってくる。

     禁煙するメリットは「起床時のダルさがなくなる。」、「食べ物の味が判る。」、「風邪にかかりにくい。」、「匂いに敏感になる。」など良いことだらけである。たばこは嗜好品であると言う人がいるが、嗜好品とは味覚や嗅覚を楽しむために飲食される食品・飲料のことである。つまり、コーヒー味、フルーツ味など香りづけできるものであり、「たばこ味」の食品はこの世に存在しない。

     これだけタバコには害があるといわれても「自分だけは病気にならない」「たばこを吸っても長生きする人がいる」等と思い込み、都合のよい情報をもち、タバコの害を小さく考える。喫煙者はリスクに対する非現実的な楽観主義者である。

     たばこに含まれるニコチンは依存性のある薬物である。喫煙者の中にはたばこを止めたい人も禁煙に失敗した人もいると思う。しかし、失敗しても何度でも禁煙にチャレンジして、諦めずにニコチン依存からの脱却を目指してほしい。禁煙で失うものは何もなく、あるのは禁煙による健康である。

  • 2023.07.07

     近年の災害は地球温暖化の影響もあり、住宅地に流れ込む濁流、河川の氾濫等、今までに目にすることが出来なかった光景が毎年のように報道される。過去にも佐賀県では武雄市、多久市、大町町等にも甚大な被害が広がった。災害発生時に避難が遅れ大きな被害を受けやすいのは、災害時要援護者と言われる高齢者や障害者、乳幼児、傷病者、外国人などで、なんらかの手助けが必要な方である。

     災害時に要援護者を災害から守るために、日ごろから地域で協力し対策を考えておくことが重要で、特に在宅で暮らす要介護認定を受けている高齢者の避難は難しく、災害に備え、「避難行動要支援者」一人ひとりについて、避難場所、避難ルート、避難を手助けする方(避難支援者)などを市町村、地域包括支援センター等と連携し、個別支援避難計画として定めておく必要がある。

     過去の災害を教訓にして、自治体やメディアも避難支援を迅速かつ的確に行うための体制を平常時から整え、早期の避難所開設や避難指示等がなされているが、私ども事業主も予想を超える災害に準備を怠らぬよう努めたい。

    2023当法人七夕飾り
  • 2023.07.06

     本法人は、平成11年に訪問介護事業に参入し、平成29年に事業停止を決定した。

     本来、国が推奨する地域包括ケアシステムの中心的な役割を担う事業が「訪問介護」だと思っているが、平成16年以降の「介護給付適正化事業」で特に生活援助に厳しい目が向けられ、サービス内容の範囲や提供時間が定められた。

      まず、最も問題なのは単体の事業として経営が出来ないことで、その最たる理由は介護報酬の単価が低いことである。複数の事業所を持ち、赤字を補填して事業を継続している事業所も多く存在する。さらに人材不足が拍車をかけ、新しい人材の確保は困難を極めている。在籍する職員の年齢も上がり、若い人材の確保が今後の課題だと思う。

     訪問介護事業に従事する職員は、利用者からの難題を解決し、時にはハラスメントを受けながらも奮闘するスキルの高い職員である。今現在の若い世代が、このような状況に足を踏み入れることは困難であろう。事業所の所要定員を満たせない事業所もあり、今後の介護人材不足は深刻である。

     高齢者人口の増加が激しい現在、2000年から始まった介護保険制度における在宅サービスは転換期に来てると思う。今後は、「介護業界の人材不足の解消」と「生計が成り立つ事業」に好転することを期待したい。

    当時のホームヘルプサービス事務室